《学会報告》第24回日本門脈圧亢進症学会(高槻 光寿)

平成29年9月14日~15日に東京都千代田区の東京コンベンションホールにて第24回日本門脈圧亢進症学会が開催されました。
以下は参加された高槻光寿先生からの報告です。



パネルディスカッション「CARTは肝性腹水の予後を改善するか」

全体の感想
このたび、東京大学名誉教授・国立国際医療研究センター理事長の國土典弘先生が主催された第24回門脈圧亢進症学会に参加してまいりましたのでご報告いたします。本会は本邦、いや世界的にも唯一の門脈圧亢進症に特化した学会で、同病態にまつわるありとあらゆる領域の研究者がそれぞれの成果を情報交換する場です。当然外科のみならず内科、放射線科、病理等、様々な診療科が色んな角度で議論するので、本当に勉強になる学会です。今回、私は肝臓手術後のCART(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)の使用経験を報告しました。本法は難治性腹水の治療法として知られていますが、今回さらにそれを進化させて大量の腹水を一度に安全に除去できるKM-CARTの報告等を拝聴し、目からウロコでした。移植外科医としてはどうしても門脈圧亢進症を呈するような肝疾患はすぐに肝移植と考えがちですが、移植までのブリッジを含めて、治療の選択肢はまだまだある、と今さらながら感じた次第です。

Q:生体肝移植後の肝静脈狭窄の症例は、原因が明らかであったのでCARTしなくてもよかったのでは?
A:本症例は術後4か月で急激な腹水貯留があり腹部緊満著明であったので、症状緩和のためにまずCARTを施行した。その後吻合部にステントを留置して経過をみたがすぐには腹水が減らず、CARTを2回追加してようやく落ち着いた。

Q:移植症例は全体的にCARTの導入時期が少し遅かった?
A:発熱などの合併症があるので移植直後は使いにくいのが正直なところ。ただ、KM-CARTのお話など伺うと、同法であればもっと早く積極的に導入してもよいのでは、とも思いました。


《学会報告》第53回日本移植学会(曽山 明彦)

平成29年9月7日~9日に北海道旭川市のアートホテル旭川・トーヨーホテル旭川にて第53回日本移植学会が開催されました。
以下は参加された曽山明彦先生からの報告です。



 今年は臓器移植法施行後 20年の記念の年であり、また肝移植の父Thomas Starzl先生が亡くなられた年でした。今回の移植学会のテーマは「先人の功績に感謝し、その意志を後世に伝える」であり、まさにこのテーマの意味を肌で感じた学会でした。Starzl先生の下で学んだ先生方、日本の移植医療をここまで牽引されてきた先生方のお話を聞きながら、その情熱とやり抜く力に胸が熱くなりました。改正臓器移植法施行以降、徐々に脳死下臓器提供数も増えてきていますが、まだまだ諸外国に比べて、その数は極めて少ないという状況です。この増えてきているという状況を今後、更に発展させるべく、移植に関わる全ての人が何が問題なのか、共通の認識を持って、力を合わせて行くことが重要だと思います。学術的にも、免疫寛容、抗ドナー特異的抗体、移植後TMAなど最先端の知識を得ることができました。引き続き、本学会に参加し、長崎チームとして情報を発信していきたいと思います。
 私自身は、「―臓器移植法20年を考える―社会システムとしての臓器提供の推進」というシンポジウムでの発表でした。何故臓器提供が進まないかということに関して、臓器提供の選択肢呈示が進まない理由について、アンケート調査などの結果をもとに発表しました。移植医、ドナーの主治医となる診療科などの医療従事者、そして市民のみなさんが、各々臓器提供に対してどのような思いがあるかをお互いが知った上でのシステムづくりが、今後臓器提供が普及していく為に重要なことだと考えています。

長崎新聞に「県内初の膵臓移植」の記事が掲載されました!!

9月13日に行われた膵臓・腎臓同時移植術の記事が長崎新聞に掲載されましたのでお知らせ致します。



医療ニュース

《学会報告》第42回日本大腸肛門病学会九州地方会(小林 和真)

平成29年9月16日に熊本県熊本市のホテルメルパルク熊本にて第42回日本大腸肛門病学会九州地方会が開催されました。
以下は参加された小林和真先生からの報告です。



パネルディスカッション 
切除不能大腸癌に対するConversion therapyの現状 11:05〜12:00
PD-03 治癒切除不能進行・再発大腸癌に対する狭義ならびに広義の
    conversion therapy (Conv.Tx) の検討

<全体の感想>
 台風の接近で、開催も危ぶまれたが、天候は小康状態で、台風で来れなかったという人はいなかったようでした。
 この学会は当初は参加するつもりはなく、存在自体知らなかったが、長崎の外科の先生が沢山来ていました。ビデオセッションはほぼ満席でなかなかの盛況ぶりでした。
 朝一のセッションで座長をやらせていただいたが、化学療法の専門が少なかったためか、会場からの質問がなく、自分で質問しなくてはならないのでちょっと疲れました。
 さて、私のセッションは、1第目が膀胱浸潤だった以外は、肝転移に関するものが多く見られました。総合討論はなく、最後に別府先生がスライドでまとめるという形式でした。
 
<会場からの質問>
Q:conversion後の、CT上は見えなくなった肝転移は区域切除したのですか?
A: 術中エコーで腫瘍が確認できたものを部分切除(病理学的にはがん細胞なし)しています。区域切除はしていません。
Q:(座長から)
H2は基本的に化学療法先行とのことですが、どうしても化学療法先行、あるいは切除先行という基準は他にありますか?
A:やはり、転移個数が多い症例については(前の演題でも)再発しやすいと考えますので化学療法先行ということになるかと思います。

《学会報告》第53回日本移植学会(高槻 光寿)

平成29年9月7日~9日に北海道旭川市のアートホテル旭川・トーヨーホテル旭川にて第53回日本移植学会が開催されました。
以下は参加された高槻光寿先生からの報告です。



第53回日本移植学会総会 旭川 
臓器横断的シンポジウム7 移植後における免疫寛容の誘導

全体の感想
旭川で開催された第53回日本移植学会総会に参加してまいりました。
旭川を訪れたのは、今回会長を務められた旭川医科大学消化器外科の古川博之教授が2年前に主催された第34回日本肝移植研究会に続いて2回目でした。前回同様、食べ物も美味しく「旭川最高!」と思いましたが、冬の寒さは想像を絶するもののようで、季節がよく天候に恵まれて本当によかったです。本会は臓器全般の移植に関する学術集会であり、今回私が発表したセッションのように臓器横断的な議論がさかんに行われておりました。特に古川教授がテーマとして掲げられた「先人の貢献に感謝し、その志を後世に伝える」をもとに、移植に関する様々な分野のレジェンドと呼ばれる偉大な先生方のご講演を多く拝聴でき、これから我々が新たな展開を示していくべき、との思いを強くしました。
今回私は、生体肝移植後の計画的免疫抑制剤減量による免疫寛容誘導について報告致しました。免疫寛容の導入は臓器移植の究極目標であり、古くから多くの実験と少しずつの臨床応用が進められています。免疫抑制剤からの離脱は多くのメリットがあるため、引き続きこの分野の研究に関わっていきたいと思います。

Q:ドナー特異的抗HLA抗体(DSA)は測定しているか?
A:今回の研究では測定していない。今後の課題と考えている。

Q:減量のプロトコールは?
A:1日2回投与のカルシニューリンインヒビターを1日1回、さらに1日おきまで3~6か月の間隔で減量する方法を採用している。今のところ成人に対してはこれ以上の減量を行っていないが、今後多くの症例が中止可能ではないかと考えている。

Q:術後いつ減量を開始するのかが重要ではないか。
A:そのとおりで、文献的には3年以上というところで成功率が大きく上昇しているため、我々のプロトコールである2年以上、では短すぎるのかもしれない。これも今後の検討課題である。

Q:MLRでStimulation Indexが高値の症例があったが?
A:ご指摘のとおりだが、一応ドナー特異的に低下はしていた。絶対値が高かった理由は不明である。